【再読】筒井康隆 『ベトナム観光公社』

前回に引き続き、筒井康隆の初期短編集について、簡単な紹介なり感想なりを書いていこう。今回の本は『ベトナム観光公社』である。

 

「火星のツァラトゥストラ

冒頭部分が光瀬龍の文体パロディになっている。そういえば光瀬龍にも『宇宙のツァラトゥストラ』という長編SFがあるが、書かれた時期は「火星のツァラトゥストラ」のほうが10年近く前なので、特に関係はないようだ。

 

「トラブル」

人体パイ投げ小説。グロテスクであると同時にユーモラスでもあるという、筒井康隆らしい作品。

 

「最高級有機質肥料」

説明不要の名作。

 

「マグロマル」

読み返すまでどんな話だったかすっかり忘れていた。簡単に言うと国際会議の戯画化である。

 

「時越半四郎」

時をかける少女ならぬ、時をかける侍の話。

 

「カメロイド文部省」

読み返すまでどんな話だったかすっかり忘れていたが、「ますますもってホタテ貝」「躍如としてめ面目ない」という二つのフレーズだけは覚えていた。

 

「血と肉の愛情」

この短編は大幅に改稿されて『幻想の未来』に組み込まれている。

 

「お玉熱演」

これも読み返すまでどんな話だったかすっかり忘れていた。いかんなあ。

 

ベトナム観光公社」

表題作。発表当時、「世の中には茶化してはいけないものがあるのではないか」と批判されたという。当時でさえそうなのだから、今のように不謹慎狩りのはびこる社会では、こういうブラックユーモアの作品を発表するのは至難であろう。

 

今回、内容をすっかり忘れていた作品がいくつかあった。読んでるうちに内容を思い出したものもあったが、「お玉熱演」は最後まで思い出すことも無く、初めての気分で読み終えた。これは得したということなのだろうか。よく分からない。

さて、次回はいよいよ中公文庫から出ていた初期短編集から最後の一冊、『アルファルファ作戦』である。