筒井康隆『東海道戦争』がハヤカワ文庫から復刊するということなので、この機会に、私も手元にある中公文庫版『東海道戦争』を何十年ぶりかで再読した。
以下、簡単に内容を紹介しようと思う。
表題作「東海道戦争」は何だかよく分からない理由で東京の自衛隊と大阪の自衛隊が戦争を始めるという話。三崎亜記の『となり町戦争』も似たようなアイデアだが、こちらの方が40年早い。
「いじめないで」
全面核戦争後にただひとり生き残った男が、戦争のきっかけを作った電子頭脳をいじめ抜く話。
「しゃっくり」
同じ時間を何度も繰り返す現象に巻き込まれた人々が右往左往する話。
「群猫」
下水道の中で繁殖した猫とワニが戦う話。
「チューリップ・チューリップ」
タイムマシンの不具合で自分が増殖する話。自分を外から見る不快感の表現がすごい。
「うるさがた」
冥王星観測員が融通の利かないロボットに振り回される話。
お紺というのは知能を持った紺色の自動車。『ナイトライダー』というアメリカのテレビ番組にナイト2000という喋る車が出てくるが、それとは違って、こちらは女性型の人格である。「いじめないで」や「うるさがた」と同様に、人工知能とのやりとりが展開されるわけだが、雰囲気は正反対の感傷的な話である。
「やぶれかぶれのオロ氏」
これもまた人間とロボットの会話が中心の話である。火星の総裁オロ氏はロボット記者たちを相手の記者会見に臨むのだが、人間の記者と違って言葉の矛盾を許さず、忖度無しに聞きにくいことを聞いてくるロボット記者たちに次第にイライラを募らせていく。
公明党が政権を取った世界を描くディストピアものである。これが書かれたときには、まさか自民党と公明党が組んで連立政権になるなんて誰も思っていなかったであろう。
次回は『ベトナム観光公社』を再読する予定である。